ブログ
BLOG
実は、賃金制度で、こんなことも、あんなこともできるのです
今回は、賃金制度について考えてみましょう。
中小企業にとって
非常に役に立つ仕組みとして
「賃金制度」があります。
もちろん人手不足対策にも効きます。
しかし、多くの中小企業では、
自社に「賃金制度」があると思っていても
それは、「賃金制度」ではないことが殆んどなのです。
このようなことを書くと
多くの社会保険労務士さんから
「私は中小企業に賃金制度を何百個と策定してきました」と
言われそうですが、
実は、一般に社会保険労務士が策定してきたと思っている
「賃金制度」とは、
単なる、賃金の決定・計算方法にすぎないのです。
私自身、社会保険労務士歴33年ですから
「就業規則」の賃金の項目や、
「賃金規程」「給与規程」を
数えきれないくらい策定してきましたが、
それらが「賃金規程」かというと、
そうではなく、
単に、賃金の決定・計算方法を規定した文書の作成なのです。
(「就業規則」や「給与規程」の策定)
では、「賃金制度」とは、どのようなものなのでしょうか?
それは、
単に賃金決定のルールではなく、
理論的かつ科学的に賃金を決定する「仕組み」なのです。
中小企業で非常に役立つ「仕組み」である、
「賃金制度」の場合、
中途入社人材の給与が10秒で1円単位まで決定できますし、
架空の入社人材や
実際の既存社員の20年後の給与まで
シミュレーションできるのです。
「仕組み」ではない、
「就業規則」や「給与規程」の
賃金決定のルールで
中途入社人材の給与が決定できますか?
既存人材の20年後はもちろん、5年後の給与をシミュレーションできますか?
恐らくできないでしょう。
なぜなら、「仕組み」ではなく、単なるルールだからです。
以上、単なるルールである「就業規則」や「給与規程」の規定内容と
仕組みである「賃金制度」の違いを理解していただけましたでしょうか。
では、この「賃金制度」を
何のために導入するのか?
何のために使うのでしょうか?
前述のように
中途採用人材の給与額が10秒で決定できることは
大きなメリットです。
他にも給与決定の根拠が明確になることで、
従業員に客観性・公平性を示すことができるのです。
多分、あなたの会社では、
従業員同士が「給与明細」を見せ合うことを嫌うのではないですか?
そう!会社にとって、
従業員同士が「給与明細」を見せ合いしたら困るのです。
なぜなら、
客観的に給与額が決まっていませんし、
公平性にも欠けるからでしょう。
例えば、あなたの会社では、
年齢も能力も役職もほぼ同一の
A氏とB氏の給与に数万円の違いはありませんが。
あった場合、その給与額の違いを説明できますか?
できませんよね。
なぜなら、A氏、B氏それぞれの採用時に
前職の給与やその時の社会のトレンド、
会社の業績等で何となく決定してしまったからです。
このような状況下で
A氏とB氏がお互い、
「給与明細」を見せ合うことは
会社にとって非常に困るのです。
パートナーのスマホと
同僚の「給与明細」は、
見ないほうが良いのです。
特に中小企業では、
A氏とB氏のように
年齢も能力も役職もほぼ同一人材の給与額の差が大きいのです。
現在、人事評価制度について、
人材に対して評価の根拠を示すことができる
人事評価制度が求められており、
まさに人材から
「なぜ私はこの評価結果なのですか?」に
答えられる人事評価制度が必要です。
賃金においても
賃金決定の根拠を明確にすべきなのです。
「あなたは○○だからこの給与額」
「あなたは△△だからこの給与額」と、
説明できなくてはなりませんね。
仕組みとしての「賃金制度」は、
数年後から20年後、30年後の給与の
シミュレーションができることは前述のとおりですが、
このシミュレーションを
既存人材に提示して、
次のように面接してはいかがでしょうか。
「あなたは、このまま、ごく普通に指示されたことだけを
処理していく場合、20年後の給与は、
月額40万円ですが、
自ら考え行動することを実践し、
〇年後に課長に昇進し、
職能資格等級を最終的に6等級まで上げ、
毎年の人事評価の結果を5段階の上から二番目の
A評価を継続的に獲得すれば、
月額50万円にすることができますよ」 と。
このように文字で表現すると
あまり、ピンと来ないかもしれませんが、
実際は、お給料のシミュレーション表で
具体的な数字とグラフを基に説明しますので、
人材にとって効果抜群です。
中には、このような説明をしても響かない人材も
一定数、存在しますが、それはそれで、
人材の現状の考えを把握できますから
中小企業における人事管理に非常に役立つのです。
このシミュレーションは、
20年後に限らず、
3年後でも30年後でも可能なのです。
そして、
仕組みとしての「賃金制度」であれば、
・20年後に安定した給与額なる制度
・新卒入社後、3年後に同年代人材よりかなり高額になる制度
など、
その中小企業の目的に応じた
「賃金制度」が策定できるのです。
このことは、中小企業の
人手不足対策にも非常に効果があります。
「求人票」や人材募集広告に
「〇年後、年収〇〇万円可能」と掲載し、
その根拠を面接時に説明してはいかがでしょうか。
人材募集における自社サイトには、
シミュレーションの表やグラフを掲載することもできます。
求人広告に
魅力的なフレーズや先輩社員のインタビューを
掲載したところで、
その「根拠」を掲載しなければ
それを閲覧する求職者にとって、逆に胡散臭く感じられるのは、
当然なのです。
あなたの会社が、魅力的なお給料を提示できるのであれば。
その根拠を明確に示すことにより、
新規雇用人材も増加しますし、
既存人材のモチベーション向上にも役立つのです。
ただ、この「魅力的なお給料」とは、
高額なお給料ではありません。
金額的には、同業種や同地域の他社に比べて
「中の上」で良いのです。
給与額ではなく、
人材にとって魅力的であればよいのです。
あなたの会社も
人材の活用につながる「賃金制度」の導入を
検討されてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございます。
今日作って明日から使用する人事評価制度の勉強会はコチラhttps://rodojikan.com/category/seminar/
執筆者 山本昌幸プロフィール:
人事制度(人事評価制度、賃金制度)指導歴28年超の専門家、特定社会保険労務士。「人事制度(人事評価制度・賃金制度)セミナー・勉強会」の講師を190回以上務め、社長・経営層の延べ受講生1900名以上。
自らの約10名の従業員を雇用する組織の経営者。
商業出版書籍
「人事評価制度が50分で理解でき、1日で完成する本 (忙しい社長のためのビジネス絵本) 」(同友館)
「今日作って明日から使う中小企業のためのカンタンすぎる人事評価制度」(中央経済社)
「従業員のための人事評価・社長のための人材育成」(同友館)
「人手不足脱却のための組織改革」(経営書院)
「『プロセスリストラ』を活用した真の残業削減・生産性向上・人材育成実践の手法」(日本法令)等