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回答:建設業の2024年問題とは、残業時間の上限規制ですから、それと絡めて回答します。
建設業の2024年問題とは、要は残業時間の上限規制ですね。
建設業の中でも、規模で言えば中小企業、職種で言えば施工管理(配置技術者、主任技術者)がメインターゲットと言えます(以下、「施工管理技士」と表記します)。
確かに作業員(職人、建設作業者)にとっても、建設業の2024年問題である残業時間の上限規制は該当しますが、彼ら・彼女らは基本的に定時で業務終了し、問題と言えば労働日数(休日出勤問題)ですから、ここでは触れずにおきましょう。
施工管理技士の賃金制度・給与制度について、建設業の2024年問題と絡めて解説していきましょう。
以前、「建設業の賃金制度・給与制度」についての終盤の文章で以下のように触れていますので、今回はその続きです。
以下、「建設業の賃金制度・給与制度」から:
残業が非常に多い施工管理技士 と ほとんど残業がない施工管理技士。
ナニがどのように異なるのでしょうか?
この件については、いずれまた。
一般的に公共工事をメインで受注している建設業における施工管理技士は、時間外労働時間(残業時間)が多い職種という位置づけです。
なぜでしょうか?
それは、公共工事は、納品文書が膨大だからです。
しかも、施工結果だけの文書だけではなく、計画段階の文書も膨大ですね。
この施工管理技士の文書作成に費やされる時間が膨大なため、残業時間が増えるのです。
建設業における賃金制度・給与制度においてこの文書作成のための手当てが含まれているのか否かは不明ですが・・・というより、ほとんど含まれていない/想定していないでしょう。
建設業における賃金制度・給与制度にこの文書作成の手当てが含まれているとしても、それは、「一級土木施工管理技士」「二級建築施工管理技士」などの資格手当に吸収されているイメージでしょう。
公共工事を中心に請け負っている中小企業である建設業者さんに勤務する施工管理技士の多くは、定額残業代が採用されており、定額残業代と認められる体裁が整っていれば、現時点では問題ありません。
ただ、その結果、使用者側(雇用側/会社)も人材側(施工管理技士)も「残業時間を削減しよう」という意識が希薄なようです。このことはある意味当然であり、当たり前かもしれません。なぜなら、どれだけの残業時間になろうとも、使用者側も人材側も金銭的な損得がないのですから(もちろん、定額残業代で想定している残業時間を超えた場合の残業手当の支給は当然ですが)。
そこに登場してきたのが、建設業の2024年問題(特に中小企業である建設業者)。
中小建設業者さんから視て、残業時間が減っても減らなくても支給金額に変更がないのであれば、問題ないように思えるのですが、そうはいかないのです。原則、年間360時間以下、月45時間以下が要求されるのです。
そこで提案です。
中小建設業者の賃金制度・給与制度において、定額残業代を廃止して、実残業時間で残業代(時間外手当)を支給してはいかがでしょうか?
このような提案をすると中小建設業者の社長さんから
「そんなことしたら膨大な人件費が発生し、会社の経営が立ち行かなくなる」
と。
本当にそうでしょうか?
もちろん、現状の残業時間のまま、賃金制度・給与制度の変更をした場合は、仰る通りかもしれません。
そこで、更に提案! というか、大前提として、
「施工管理技士の残業を限りなくゼロにできませんか」
ということです。
実際、私のコンサル先である土木建設業のA社では、6人在籍の施工管理技士の残業時間は、一か月平均10時間ほどです。
逆にISO9001の審査でお邪魔するその他多くの建設業者さんでは、施工管理技士の残業時間は、一か月平均70-100時間が非常に多いのです。
この残業時間が非常に少ない “A社” と “残業時間が月70-100時間の“その他多くの建設業者さん” とでは、職種が同じ施工管理技士でも一体、何が異なるのか?
全てのことに理由がありますね。すべての事象に根拠がありますね。
A社の施工管理技士は、膨大な文書作成を現場稼働時間に作成してしまうのです。
「そんなこと可能なのですか?」「そんなのムリです」
と突っ込まれそうですが、「可能なのです」「ムリではありません」と回答しておきます。
現場稼働時間は、一般的に午前8時~午後5時。実際は、午後4時30分で現場は終わるかもしれません。
施工管理技士として、さすがに現場が稼働している午前中の文書作成は難しいのかもしれませんが、午後1時~午後4時の3時間を有効活用できれば可能なのです。もちろん、工程会議などある場合は無理でしょうか工程会議は毎日実施されませんね。また、舗装工事や管の埋設工事のように現場を移動しながら施工する場合は、文書作成は難しいかもしれませんが、それでも、自動車の中などで文書作成可能なのです。
どのようなことでも「できません」では何も改善できません。
それよりも「なんとかできる方法はないのか?」という着眼点が必要なのです。
当事例の場合、実際の実施事例が多数あるのですから。
そして、以上のことが実施できる人材に対して、
・人事評価制度で高評価を付与する
・賃金制度・給与制度で手当てを創出する
などの施策を実施すればよいでしょう。
中小建設業においては、A氏とB氏の成果が同じであれば、次のように考えてください。
・A氏:残業時間50時間:基本給=200,000円、残業手当=72,050円 合計=272,050円
・B氏:残業時間10時間:基本給=250,000円、残業手当=18,020円 合計=268,020円
会社としては、人件費が一人4,030円削減できますし、B氏にしてみれば、給与が4,030円減りますが、時間外労働が月40時間も削減されます。どちらが良いのかもうわかりますね。
ですから、中小企業である建設業の賃金制度・給与制度は、以上にようにすべきなのです。
ただ、一つ付け加えさせていください。
賃金制度・給与制度とは、「就業規則」や「賃金規程」に規定されている単に賃金の決定・計算方法ではないということをご理解ください。
私が、2024年問題に絡めて中小企業である建設業者さんに導入が必要である賃金制度・給与制度とは、あくまで“仕組み”であるということを。
関連ブログ:「建設業の2024年問題は、『賃金制度』の問題です」はこちらです。
執筆者 山本昌幸プロフィール:
人事制度(人事評価制度、賃金制度)指導歴28年超の専門家、特定社会保険労務士。
商業出版書籍に「CCUS(建設キャリアアップシステム)/CPDの活用で建設業の人材不足解消と育成はできる!」(中央経済社)、「人事評価制度が50分で理解でき、1日で完成する本 (忙しい社長のためのビジネス絵本) 」(同友館)、「今日作って明日から使う中小企業のためのカンタンすぎる人事評価制度」(中央経済社)等がある。
20年以上前から愛知建設業会館(愛知県建設業協会)7階に本社事務所を構え、中小建設業への指導多数。
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