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法令に準拠した形で60歳再雇用時の賃金はどのように決定すべきか
企業にとって65歳までの雇用が義務化され、
さらに70歳までの雇用が努力義務となった昨今、
60歳以降の賃金の決定方法で悩まれる社長、経営層、総務担当の方も多いと思います。
ここでは、定年年齢を60歳と仮定したうえで
65歳までの継続雇用時の賃金の決定方法を考えてみましょう。
一般的には、60歳定年で一度退職し
その後、再契約(再雇用)という考え方が一般的です。
ですから、60歳到達後も
60歳到達前と同一の責任があり
職務内容が同一ということは
一部の企業や職種を除いて考えにくいことです。
もちろん、60歳定年前から役職にも就いておらず、
60歳到達以降、職務内容に変更がないのであれば、
再契約(再雇用)であったとしても、同一労働同一賃金を鑑みると
賃金を下げるという選択肢は厳しいでしょう。
このような人材の場合、
一般的にジョブ型雇用・専門職の方が該当します。
では、60歳到達までに役職に就いていないジョブ型雇用・専門職人材以外の
人材に対して、どのように60歳到達時以降の賃金を決定すべきなのか。
まず、大前提として、
定年に達した人材のすべてが
会社にとって同一の価値とは限らないことは事実です。
1:必要な人材もいれば、
2:代わりの効く人材や、
3:それほど必要としない人材、
4:極論を言うと不必要な人材も存在するかもしれません。
前述に列挙しただけでも
四種類の人材がいるのです。
更に細分化するともっと種類が増えることでしょう。
いわば、会社にとって価値が異なる60歳定年時人材が存在するです。
この“会社にとって価値が異なる60定年時人材”について、
60歳到達時以降の賃金を同一に決定すること自体、
不公平ではないでしょうか。
では、どのようにして
60歳到達時以降の賃金に差をつければよいのでしょうか。
そこで、人事評価制度です。
60歳定年前の少なくとも2年以上の
人事評価結果により、
60歳到達時の賃金を決定するのです。
ただ、ここで注意が必要です。
どのような人事評価制度でも良いというわけではありません。
「評価基準」と「評価項目」が明確な「理想的な人事評価制度」であることが必要です。
巷に存在している一般的な人事評価制度の場合、
評価結果の根拠が明確でないため、
その結果により賃金に差をつけてしまうことは
非常に危険といえます。
60歳定年到達時以降の再雇用の賃金を決定する場合、
「評価項目」と「評価基準」が明確であり、
「評価結果」がその評価根拠とともに本人にフィードバックされている必要があるのです。
さて、この文章をお読みのあなたの会社では
人事評価制度は導入済みですか?
仮に導入済みの場合、
質問:評価結果を評価結果の根拠とともにフィードバックしていますか?(されていますか?)
残念ながら、「ハイ」と回答できる人事評価制度導入済み企業は希少ではないですか。
また、あなたの会社で、
未だ、人事評価制度未導入の場合、
「評価項目」を設定した根拠と
明確な「評価基準」を設定した人事評価制度が存在することをご存じでしょうか?
そのような「理想的な人事評価制度」も存在するので
ぜひ、導入されると良いでしょう。
営利企業の場合、
“1:必要な人材”以外は、
それほど優遇してまで60歳到達時以降の継続雇用はしたくはないでしょう。
しかし、本人が希望する以上、
65歳までは雇用しなくてはならないのですから、
法令に抵触しない範囲で処遇に差をつけることは当然と言えましょう。
このようなこと書くと非常に冷たい印象を持たれるかもしれませんが、
私がお伝えしたいことは全く逆です。
会社にとって必要な人材については、
徹底的に優遇していただきたいということです。
優遇とは、賃金はもちろん、
そのほかの処遇についてもです。
「理想的な人事評価制度」の評価結果により
60歳到達時以降の賃金をどのような構成にするのか、
支給するのかについては、
「60歳到達時以降賃金制度」を策定すべきです。
「60歳到達時以降賃金制度」とは、
60歳到達自前2-5年の人事評価結果や
60歳到達時の職能資格等級を
参考にして60歳到達時以降の賃金を毎年決定していく賃金制度のことです。
現役世代と60歳到達時以降世代は、
抱えている事情も異なり
成果も異なります。
この両者を同一の賃金制度で括るのは不合理と言えます。
現役世代には必要な手当てであっても、
60歳到達時以降世代にとっては不要な手当ても存在します。
その不要な手当てについて、
例え、「該当しないのだから支給しない」とはいえ、
同一の賃金制度で運用することには違和感があります。
また、逆の場合も考えられますね。
例えば、余裕がある企業では、
現役世代では参加することが難しかったボランティアなどは、
60歳を超えて参加しやすくなるかもしれません。
その手当を会社で支給することも社会貢献の一環と言えましょう。
以上のように
「評価項目」を設定した根拠と
明確な「評価基準」を設定した人事評価制度 を
60歳定年前の最低でも2年間運用し、
60歳到達前の賃金制度 と
60歳到達後の賃金制度 の
2種類の賃金制度を運用していけばよいのです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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執筆者 山本昌幸プロフィール:
人事制度(人事評価制度、賃金制度)指導歴28年超の専門家、特定社会保険労務士。
商業出版書籍に「人事評価制度が50分で理解でき、1日で完成する本 (忙しい社長のためのビジネス絵本) 」(同友館)、「今日作って明日から使う中小企業のためのカンタンすぎる人事評価制度」(中央経済社)、「従業員のための人事評価・社長のための人材育成」(同友館)、「人手不足脱却のための組織改革」(経営書院)、「『プロセスリストラ』を活用した真の残業削減・生産性向上・人材育成実践の手法」(日本法令)等がある。
「人事制度(人事評価制度・賃金制度)セミナー・勉強会」の講師を160回以上努め、社長・経営層の延べ受講生1600名以上。
自らの約10名の従業員を雇用する組織の経営者。