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会社としてトンデモナイ「損」をしている可能性があることを認識しましょう
今日は、人事評価制度、賃金制度の話ではなく、
「就業規則」の話です。
私自身、いつも意識していないのですが、
社会保険労務士として開業歴が32年ありますので
たくさんの「就業規則」を策定してきました。
また、日常、人事評価制度や賃金制度を
策定や変更する場合に
コンサル先企業の「就業規則」「賃金規程」を拝見するのですが、
非常に残念な「就業規則」「賃金規程」が散見されます。
今回のブログでは、
「会社を守るための就業規則」というテーマは脇に置き、
心底、もったいないというか、残念な「就業規則」「賃金規程」について
解説してみます。
私は、社会保険労務士・行政書士として
わが国唯一のISO9001・ISO14001・ISO45001・ISO22000主任審査員ですから、
ISOのコンサルや
場合によっては、
ISO審査で
企業さんに伺って確認した「就業規則」「賃金規程」を確認させていただくことがあります。
その実例をベースに解説してみましょう。
昨年末(2023年12月)に
某建設業者さんに伺った際、
担当者の方から次のような悩みを打ち明けられました。
「2024年問題において、当社も残業が増えておりなかなか削減できないのです」と。
そして、
「今まで、十分に残業削減に取り組んできて、成果も出してきたのですが、
いよいよ『乾いたぞうきん』であり、絞ることができないのです」と。
その建設業者さんは、
私からみてもあまり残業が多い印象ではなかったのですが、
日々、残業を2時間半くらいしているとのこと。
その建設業者さんは、月の出勤日数が20日ほどですから
2.5時間×20日=50時間 となり、
月45時間を超えますし、
年間でも600時間ほどになります。
その企業では、
残業時間を月30時間、
年間360時間以下に抑えたいとのことなので、
現状の数字とはかなり乖離があります。
担当者曰く、
建設業者として残業削減や生産性向上のために
やるべきことを多々やってきて
今の残業時間に収まってきたとのころ。
建設業者さんの
・残業削減対策
・生産性向上対策
については、
私も専門的に指導しており、
その私から見ても、当該建設業者さんは的を射た取り組みであり
とてもがんばっている状況と思われました。
まさに、乾いた雑巾であり絞ることができる「水」がない状況でしょう。
ただ、このままだと残業時間は多いままです。
これほど残業時間削減・労働時間削減に努力している建設業者さんが
困った状況なので
私としては何とかしてあげられないのかと詳細を聞き取ることにしました。
で、担当者から詳細に話を聞き始めたところ
詳細に訊く前にあることが判明したのです。
その「あること」というのは、
当該建設業者さんの年間の所定労働時間が
年間の法定労働時間よりも短いのです。
あなたは、労働基準法で規定されている
年間の法定労働時間をご存じですか?
年間の法定労働時間の計算方法は以下の通りです。
まず、大前提として、
法定労働時間は、1日8時間、週40時間ですね。
であれば、1年は何週あるのかを明確にすれば良いのです。
1年は何週あるのか = 365日÷7日=52週
で計算でき、
1年は52週ということになります。
この52週に40時間(1週40時間労働)を乗ずれば良いのです
52週×40時間=2080時間
年間の法定労働時間は2,080時間ということになります。
では、当該建設業者さんの所定労働時間はというと、
始業8時、終業17時30分(休憩1時間30分):実働8時間
だったのです。
しかも、年間休日は125日ですから
労働日数は240日(一カ月20日)なのです。
この年間労働日数の240日に
8時間労働を乗ずると1,920時間。
残業時間:一日2時間30分×240日=600時間
合計しますと:1,920時間 + 600時間 = 2,520時間
となり、
法定の時間外労働時間は、
年間440時間です(2520時間-2080時間)。
そして、当該建設業者さんは、
有給休暇を最低でも年間10日は取得させているので、
440時間-(10日×8時間)=360時間
そうです。
年間の残業時間が360時間に収まるのです。
当該建設業者さんの場合、
変形労働時間を活用すれば
更に残業時間が削減できるでしょう。
多くの皆さんが誤解している例として、
「36協定」で協定する時間外労働について、
自社の所定労働時間を超えた労働時間のことだと勘違いしているのです。
本来、「36協定」で協定する時間外労働とは、
法定労働時間を超える時間外労働時間なのです。
あなたの会社でも、
そもそも自社の所定労働時間が
法定労働時間を下回っていませんか?
特にホワイトカラー職が多い企業では、
就労時間が
9時~17時(休憩1時間)という
実働7時間が相当数あります。
この場合、週の所定労働時間は35時間となり、
法定労働時間数の40時間よりも
5時間も少ないことになるのです。
あなたも労働時間について、
・法令で規定されている「法定労働時間」
・自社が規定した「所定労働時間」
の2種類が存在していることを理解してください。
今回は、残業時間(時間外労働)に焦点を当てましたが
次の機会に
心底、もったいないというか、残念な「就業規則」「賃金規程」について
更に説明したく思います。
(事例が満載なのです)
最後までお読みいただきありがとうございます。
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執筆者 山本昌幸プロフィール:
人事制度(人事評価制度、賃金制度)指導歴28年超の専門家、特定社会保険労務士。
商業出版書籍に「人事評価制度が50分で理解でき、1日で完成する本 (忙しい社長のためのビジネス絵本) 」(同友館)、「今日作って明日から使う中小企業のためのカンタンすぎる人事評価制度」(中央経済社)、「従業員のための人事評価・社長のための人材育成」(同友館)、「人手不足脱却のための組織改革」(経営書院)、「『プロセスリストラ』を活用した真の残業削減・生産性向上・人材育成実践の手法」(日本法令)等がある。
「人事制度(人事評価制度・賃金制度)セミナー・勉強会」の講師を160回以上努め、社長・経営層の延べ受講生1600名以上。
自らの約10名の従業員を雇用する組織の経営者。