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今日は、運送業の2024年問題と人事評価制度についていろいろ考えてみましょう。
2024年問題とは、残業時間の上限規制であり、運送業は適用が猶予されていたのですが、遂に2024年4月から適用されることになります。
2024年問題は、運送業においても建設業同様、人手不足問題であることに代わりはありません。
また、運送業の場合、この残業時間の上限規制と共に運転手の改善基準告示が改正されますので、そちらにも対応が必要になります。
私も中部トラック研修センターの物流大学の講師・物流技能専門校の講師を10年担当している関係から、中小企業など企業規模を問わす運送業者さん・物流業者さんから「運送業・物流業の2024年問題・改善基準告示への対応セミナー」講師を依頼されることが多い状況です。
運送業の2024年問題も建設業同様、人手不足問題と言えるでしょう。
建設業の2024年問題のブログでも説明した通り、運送業においても人手不足とは無縁の運送業者さんが存在しています。しかも、中小企業で。では、人手不足であるほとんどの運送業者さんと、人手不足とは無縁のごく一部の運送業者さんはナニが異なるのでしょうか?また、人事評価制度とはどのように関連性があるのか。
10年前とは異なるドライバーさんの意識
ほとんどの「人手不足運送業者さん」とごくわずかな「人手不足とは無縁の運送業者さん」の違いを説明する前の大前提として、中小企業の運送業のドライバーさんの意識が10年前とは変わってきているという子です。どのように変わってきているのでしょうか?
それは、安全に対する意識です。
以前は、「安全なんか最優先していれば稼げない」というように改善基準告示で定められている「連続運転時間」や「拘束時間」などを守る意識が乏しいドライバーさんが多かったのですが、最近では、中小企業であっても「安全は何よりも優先する」という意識が定着したドライバーさんが増えています。その結果、交通事故削減への取組みも以前に比べて高まってきたのです。この辺は、人事評価制度の効果もあるのでしょう。
運送業者さんで働く人材であるドライバーさん自身の安全意識が高まっている結果、安全を重視している運送業者で働きたいニーズが高まっているといえます。これは、或る意味当たり前のことなのですが、以前は、「ドライバーは稼いでナンボ」「残業大歓迎」という風潮があり、安全管理の妨げとなっていました。
このような変化の結果、「人手不足とは無縁の運送業者さん」の一番の特徴は、安全管理・事故削減の活動を徹底している運送業者さんなのです。
安全管理・事故削減の活動を徹底している運送業者さんは、働くドライバーさんにとってはもちろん、その家族にとっても安心できる優良運送業者さんと言えます。
安全管理が疎かな運送業者さんで、「人手不足で困っています」という話を耳にすると、「そりゃ、当たり前でしょう」と思ってしまいます(これは、中小企業、中堅企業、大企業問わずですね)。
安全管理・事故削減活動は運送業にとっての義務
ここで強く言いたいのは、運送業者さんにとって安全管理・事故削減活動は運送業にとって義務であり、当たり前のことなのです。しかし、それが出来ていない・不完全な運送業者さんがなんと多いことか。
以上のことから、運送業者さんが人手不足を解消するためには、まずは、安全管理や事故削減のための活動をしっかり行う。そして、各人材・ドライバーの安全管理活動・事故削減のための活動について、人事評価制度の評価項目にして、明確な評価基準を設定して運用する必要があるのです。
人事評価制度で安全管理活動・事故削減のための活動を管理する場合のポイントとして、事故発生件数という成果(結果)のみの評価に終始しないことです。事故の発生(若しくは事故未発生)は、単なる偶然かもしれないからです。
それよりも「事故を防止するための様々な取組み」「事故防止のために必要な力量の身につけ」を評価項目及び評価基準として設定しなくてはならず、中小企業であれば尚更なのです。
事故が未発生の場合、「たまたま事故が起きなかっただけ」かもしれません。
事故は、「計画の下に活動した結果、事故を起こさなかった」という実績が必要なのです。
ですから、中小企業をはじめとした運送業の人事評価制度においては、事故を起こさないプロセスや安全のための活動自体を評価項目にすべきなのです。
以上のように事故を起こさないため・安全重視のための人事評価制度を運用することにより、事故は削減されていくでしょう。そして、そのことを積極的に社外にPRして、人材採用に活かすのです。
「わが社は安全管理・事故削減への取組みを重要項目として実施しています。その実施のために人事評価制度を活用し、各人材が積極的に取り組めるように促しているのです」とPRすべきです。
そして、できれば、安全管理についての人事評価項目・評価基準、事故削減への取組みについての人事評価項目・評価基準を公表すればよいのです。場合によっては、「人事評価表」をそのまま、自社サイトにアップすることも必要でしょう。この「人事評価表」を求職者が視て、「こんな取り組みしている運送会社は嫌だなぁ」と思われたら、こっちこそ、そんな人材はいらないのです。
あなたの会社が中小企業であっても「人事評価制度」で事故削減を実現し、2024年問題を乗り切りませんか。
執筆者 山本昌幸プロフィール:
人事制度(人事評価制度、賃金制度)指導歴28年超の専門家、特定社会保険労務士、運行管理者。
商業出版書籍に「人事評価制度が50分で理解でき、1日で完成する本 (忙しい社長のためのビジネス絵本) 」(同友館)、「今日作って明日から使う中小企業のためのカンタンすぎる人事評価制度」(中央経済社)、「社長の決意で交通事故を半減! 社員を守るトラック運輸事業者の5つのノウハウ」(労働調査会)、「運輸安全マネジメント構築・運営マニュアル」(日本法令)等がある。
中部トラック総合研修センター「物流大学」「物流安全管理士講座」講師歴10年。
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